「あなたが好きです。私とお付き合いしていただけませんか?」
これが私の生まれて初めての告白だった。そして、
「……悪い。俺、好きなひとがいるんだ。ホントに、すまない」
これが私が生まれて初めて振られたときのセリフだった。当然、ショックは小さくない。
でも、私もこういう事態も想定してある。ううん、こうなるとわかった上で告白したってのが正しいかな。
「そっか。うん、わかった。でも、きっと私とお兄さんはまたこうして会うことになると思うよ。きっとね」
不思議そうな顔で首を傾げるお兄さんと別れた私は、これからのことを想像して頬を緩ませる。
私が好きになったのは、毎朝電車で見かける大学生。
ちょっとワルぶってる感じの、でも綺麗な顔立ちをしたお兄さん。いわゆるイケメン。背も高くて筋肉質の素敵な男性。
(だけど見た目と違うのよね、お兄さんの本質は。私、知ってるから。見ちゃったから)
今、私の元には、以前こっそり撮ったあの人の動画がある。もちろん盗撮。電車の中で女の人に痴漢されているときのものだ。
男の人でも痴漢されるのにもびっくりしたけれど、でも私が一番驚いたのはこのときのお兄さんの反応だった。
(お兄さんったら、本気で抵抗しなかったのよね。その気になればいくらでも振り払えたのに)
お兄さんに痴漢してる女の人はちらっとしか見えなかったけれど、あまり美人には思えなかった。
ううん、はっきり言うと、男の人が痴漢されて喜ぶタイプじゃなかった。
(それなのにお兄さんは困ったような顔だけして、されるがままになってた。多分……ううん、絶対にそういう人間なんだ、お兄さんって)
私にはわかる。だってある意味同類だから。お兄さんとではなく、お兄さんに痴漢していたあの女と同じ人種だから。
(私の告白をあっさり断ったお返しだよ)
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